「このお店のフレンチトースト、凄い美味しいんだよ。」
君が軽く言っただけのその言葉を僕は、今も忘れていない。君が嬉しそうに目を細めて、目を輝かせて指をさした先にあったフレンチトースト専門店に、今でも僕は1人で通っている。
「優くん、ずるいよ。」
そんな声が聞こえてくるような気がして、フレンチトーストを食べながら口元を緩める。
周りにはカップルばかりで、そのせいか柔らかくて温かい雰囲気がこの店には漂っている。この店の雰囲気が好きだって君も言っていたのを思い出す。
「子供じゃないんだから。」
笑いながら僕の口元に手を伸ばす君が目の前に見えたような気がして、思わずその手に自分の手を伸ばしてみても手は宙を切るだけ。
気が付いたら頰に涙が伝っていて、僕を見る周りの視線も痛い。
僕は急いで席を立って想い出の店を後にした。
君が、香奈が居なくなってもう1年が経とうとしている。