「よし、開けます」


誰に宣言しているのかと思いつつ、深呼吸し封筒に手を伸ばす。
文房具バサミを右隅から少しずつ入れ、中身の便箋を切らない様に気を付けないと。


切り終えた封筒の中から、便箋をゆっくりと取り出す。
中の便箋も、封筒と同じ空色だ。
二つ折りにされている便箋をそっと広げると、やっぱり私宛で間違いない。


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DEAR Kasumi

手紙ありがとう。
元気にしているみたいですね。

25歳の私は、夢見た職業には就かなかったみたいだけど、それはそれでいいと思います。
変わり映えのしない毎日でも、大人になった私はそれなりに楽しんでいるみたいだし。

中学時代に比べたら、今は友達もいて良かったです。
安心しました。


覚えていますか?
一番仲良くしていた女の子のこと。
ある日突然、その子から無視されたこと。

それ以来、周りに心を閉ざしたまま。
彼女とは言葉も交わさずに卒業しようとしています。


もう忘れてしまっているかな?
私は、彼女の気持ちが知りたいと思っています。
もしも心のどこかに彼女の記憶が残っていたら、彼女に会ってほしい。
会って、なぜ私を無視し始めたのか聞いてほしい。

それから………………………
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               カスミ
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