二十五歳の私は、すこぶる元気だけど。
あの頃の私に、胸を張って威張れるような事など何もしていなくて。
ただ過ぎ去る毎日を送っているだけで、たいして楽しくもない。
仕事は、十五歳の私が夢見た仕事とは全く違う職種に就いたし。
好きな人はいたけど、大学卒業と同時に告白してフラれてしまった。
よって、彼氏などいるはずもなく。
どんな大人と聞かれても「普通の人」で。
素敵な女性になっているとは、到底言えない状況で。
独り暮らし?
いえいえ、安月給なもので未だに実家暮らしさせてもらっています。
プリンセスは、実は今でも好きなんだけど。
いい歳をして大きな声では言えなくなってきたし。
そもそも。
現実は、そう甘くなくて。
素敵な王子様なんて、平凡な人生にそう易々と登場したりしないのだよ。
「十五の私、ごめんよ。夢いっぱいで書いた手紙にケチ付けるようだけど。これが現在の私なんだよね」
目を通し終えた手紙を部屋のローテーブルの上に広げたまま、深くため息をついた。
独り言を呟くだけでも空しくなる。
しかも、昔の私からの異常なまでの期待感。
それに反している、今の現状。
でも。
表面上だけの薄っぺらい友達も、一人位はいる。
今の仕事だって、忙しいけど嫌いじゃない。
実家暮らしも、結構居心地がいいし。
平凡な毎日に不満なんて、ない。
ただ。
せっかくの二十代を、半分終えてしまった事を実感させられた手紙。
一番引っ掛かったのは……。
好きな人、いない。
彼氏、いない。
結婚、とんでもない。
十五歳の私に、残念なお知らせをしなければいけない事だ。