もの凄い情報をサラッと告げた瑞穂ちゃんに、私はどうしてそんなことが分かるのかと訊ねると、瑞穂ちゃんは不思議そうな顔をしている私を見て含み笑いをした。


「あの手紙を見て、なんにも気づかなかったの? 手紙に使われていた便箋と封筒って、私達が卒業する時に貰った記念品じゃない」

「違うよ、私が貰った記念品は桜色の……」

「香澄が覚えてないのも無理ないか。私は卒業式の日に、浩太の学ランからブン取った第二ボタンを入れておきたくて、浩太に頼んで封筒も貰ったの」


そう言って、瑞穂ちゃんは私に届いた空色の手紙と同じ、二つ折りになった封筒を私の手に握らせた。
中から転がって出てきた学ランのボタンが、掌にコロンと姿をみせる。
葉山君が着ていた学ランのボタンを、私が手にしているなんて。


「ホントは、香澄が貰うべきものだった第二ボタンだから。返すね」と掌に転がるボタンを見つめている私に、瑞穂ちゃんは言ったけれど。


「いやいや。本来、返さなきゃいけない相手は葉山君でしょ。私に渡してどうするのよ」

「香澄が要らないなら、浩太に会った時に返しておいてよ」


そう言われても困ってしまう。
私は葉山君が今どこで、どうしているかも知らないのだから。
会う以前の問題なんだってば。