翌日。
よく眠れなかった私は、瑞穂ちゃんを起こさない様に静かに布団を抜け出し。
冷蔵庫を物色し、残り物を使って朝食を用意した。
コトコトと煮えている鍋の中は、ほうれん草と油揚げの味噌汁。
毎日忙しく働いているだけある、瑞穂ちゃんのうちの冷蔵庫の中にはメインになりそうな食材は見当たらなくて、目玉焼きしか作れない。
お米が炊き上がったアラーム音で目を覚ました瑞穂ちゃんは、ノソノソとキッチンにやってくると朝食が出来上がっている事に感動していた。
二人で向かい合って食べる朝食は、修学旅行以来だ。
お互い「エヘヘッ」と少し照れ笑いを浮かべながら朝食をとり、瑞穂ちゃんは出掛ける準備を始めた。
「貴重なお休みを私で潰しちゃってごめんね」
「何言ってんのよ、来てくれて嬉しかった。また来てよね。実家に帰った時は私も会いに寄るからさ」
放課後の下校時みたいに、瑞穂ちゃんと肩を並べ駅に向かう。
乗車する電車は逆方向だからと、線路を挟んだホーム上では視線と口パクで会話する。
長い間、会っていなかったのに相手が何を伝えてきているのか分かるなんて、本当に不思議。
先に電車が到着した瑞穂ちゃんは車内に乗り込むと窓際に立ち、バイバイと手を振った。
そんな瑞穂ちゃんに手を振り返す私は、別れ際に言われた事を思い出す。
「手紙に心当りがあるって言ったでしょ? あれ書いたの、うちの卒業生だよ」