「葉……山君が、私のことを?」


と、十年も経ってしまったのに今更そんな話を聞いても、言葉に困るよ。
どうしてもっと早く教えてくれなかったの? という思いと、無視された時に勇気を出して瑞穂ちゃんに話しかければよかった。
拒まれても、その理由をしつこく問いただせばよかった、という気持ち。


もしも、私が適切な行動を取っていたら。
葉山君との仲も瑞穂ちゃんとの仲も、もっと違うものになっていたかもしれない。
十年後の私自身だって、今とは違う人生を送っていたかもしれないのに。


知らなかった話を聞き、私の中には「もしも」と「後悔」の言葉しか残らない。
あの頃から、何一つ変わっていないのは私。
勇気も出せず、逃げてばかりで。
真実を知ろうともしなかった。
何も努力しなかったから、二十五歳の私は立派な大人になれていないのかもしれないな。


「香澄、私が言うのもなんだけど。浩太に会ってみたら?」

「葉山君に?」


何を言い出すのかと思えば。
そもそも中学時代だって、葉山君とは特に親しくしていたわけじゃない。
同じクラスに居ても、勇気を出して話しかける事さえ出来ずに。
私はいつも、遠くから葉山君の姿を目で追っていただけ。