どれくらいの時が過ぎたのだろう。
コチコチと時を刻んでいる時計の音と、キッチンに置かれた冷蔵庫が時折ブーンと鳴る音が部屋に響いている。


「……香澄、まだ起きてる?」

「ん? 起きてるよ?」

「さっき、ファミレスで私に見せてくれた手紙の事なんだけど」

「うん?」

「あの手紙、ちょっと心当りあるかも」


ポツリと呟く様に口にした瑞穂ちゃんが眠る左側に顔を向けると、天井を見つめていた瑞穂ちゃんが私の方に顔を向けた。


「ホントはね、浩太に告白してフラれた時に聞いちゃったの。もしかして、誰か好きな人がいるの? って。浩太は何て答えたと思う? よりによって私の前で香澄の名前を口にしたのよ」


瑞穂ちゃんから語られたのは、私の知らなかった過去。
しかも葉山君の気持ちを知り、瑞穂ちゃんは私と葉山君の仲を取り持つと嘘をついたらしい。

おまけに当の私は、そんな事も知らずに瑞穂ちゃんの前でヘラヘラ本心を隠して笑っている事にも腹が立ち「ひとの気も知らないで!」と悔しくなり、無視したというのが本心だった。


「なんのことは無い、香澄と浩太は両思いだったのよ」

「う……そ……」

「もしも、浩太への気持ちを香澄が正直に話してくれたら。その時は浩太の気持ちを教えてあげようかとも思う気持ちもあったのに。結局、言葉も交わさないまま卒業して疎遠状態になっちゃんたんだよね」と教えてくれた。