瑞穂ちゃんの言葉は、意外なものだった。
私が見えない壁を作ったからだと言うのだ。
「どれだけ私が傷ついたと思ってるの?」と、瑞穂ちゃんはバッグから一通の封筒を取り出し「読んで」とテーブルの上に置いた。
それは紛れもなく、十五歳の瑞穂ちゃんが十年後の瑞穂ちゃんに宛てたタイムレターだった。
瑞穂ちゃんに促され、私は封筒の中から数枚綴られた便箋を引き抜き、そっと広げ目を落とす。
瑞穂ちゃんのタイムレターには私の知り得なかった、あの頃の二人の様子が綴られている。
誰にも話したことが無い私の秘密が、そこには記されていた。
中学時代、二人で廊下を歩いている時も。
会話をしながら私が目で追っていた男子の存在に気付いた瑞穂ちゃん。
いつ私が好きな人の話を切り出すのかと待っていたのに、一向に話さない。
もしかしたら、自分は友達として信用されていないのではないか。と悲しくなり不安になっていった。
待っても待っても、何も言い出さない私に苛立ちを覚えるようになり。
小さなことに拘っている瑞穂ちゃん自身にも腹が立ち、何時しか私を無視したり避けてしまっていた。
クラスの女子達は、仲の良かった二人がケンカをしたと思い、影響力がありそうな瑞穂ちゃん側についただけの事だった。