瑞穂ちゃんに案内され、近所のファミレスへ行き。
車道が眺められる窓際の席で、瑞穂ちゃんと私は向かい合って座った。
「香澄は何食べる? 私はサイコロステーキかな」なんて、瑞穂ちゃんはメニュー表を開くなり速攻で注文する物を決めている。
それに引き換え私はパラパラと順番にメニューを一つずつ確認し、カロリー表示にまで気を配ってしまっていた。
「肉よ!肉!肉! 香澄も肉メニューにしなって、元気になるよ」
本当は焼き肉に行きたかったらしい瑞穂ちゃんは、日頃から肉料理でスタミナをつけているのだと教えてくれた。
「ダンサーはさ、ニコニコ笑って踊ってるだけに見えるだろうけど、これでも結構ハードスケジュールなんだ。一日に何公演もするしさぁ」
などと、瑞穂ちゃんは運ばれて来たサイコロステーキを二切れフォークに乗せると、私が頼んだイタリアンハンバーグのお皿の脇に乗せた。
「そっちも少しちょうだい」と、私の返事も聞かずにハンバーグの隅をフォークで一口ぶん切り分けると、そのまま瑞穂ちゃんの口の中に私のハンバーグが消えて行く。
「美味しい?」
「うん、美味しい。昔も塾に行く前に寄ってたコンビニで、肉まんとか半分こして食べたよねー」
瑞穂ちゃんは懐かしそうに話すけど、ちょうどその後くらいから瑞穂ちゃんの様子がおかしくなったんだよ?
もしかして、本当に忘れちゃったの?