ご婦人に教えられた道を右に曲がりかけ、急に足を止めた。

私は何を迷っているんだろう。
瑞穂ちゃんとの事に決着をつけ、親身になってくれている美園との仲を深めたいから。
勇気を出して、ここまでやって来たというのに。

足が竦む。
やっぱり、仲の良かった瑞穂ちゃんから無視された記憶を思い出してしまうと、会うのが怖い。

また冷たい仕打ちをされてしまったら、今度こそ立ち直れない気がするから。

親友になれそうな美園との仲を、これ以上深める事が出来なくなるだろうという不安が押し寄せた。


迷子になっていたために、散々歩き回り足も痛い。
太陽も傾き始めて、西日が強くなっている。


やっぱり、会うのやめよう。


Uターンした私の肩にポンッと置かれた手が、強い力で私を引き留めた。
その力に少しのけ反り気味になった私は、その勢いのまま振り返る。


「遅かったね」

「……瑞穂……ちゃん」


私を引き留めた主の手は、グラデーションに塗られたジェルネイルが施され。
見事なプロポーションを隠そうともしないファッションに身を包み、明るいライトブラウンの髪は肩の上で軽やかに揺れている。

けれど、そんないで立ちに似合わないスッピン顔は、あの頃と変わらない十五歳の面影を残した瑞穂ちゃんの笑顔だった。


「母親から連絡貰って、朝から待ってたんだよ?」