「好きだった男子? へぇ、今も地元に居るの?」

「知らない。進学した高校も違ったし、卒業してからどうしているかなんて気にした事もなかった」

「香澄、つめたーい」

「そんなもんでしょ、片思いなんて」


手にした空色の便箋。
内容は全て、今の私に対するアドバイス的な事まで書かれていて、過去の私に背中を押されているような言葉が連なっていた。

まるで私を励ましてくれているみたいに。


この手紙が届いてから、疎遠になってしまった瑞穂ちゃんに『今からでも遅くない、会って理由を聞いて』と書かれていた事が気になっていて。
思わずアドレス帳で瑞穂ちゃんの実家を確認した。


「何してるの?」

「瑞穂ちゃんに会ってみようと思って」

「手紙に振り回されるつもり? 踊らされてるだけかもしれないのに」

「でも……」


記されている文字からは、そんな雰囲気は読み取れない。
不思議と心がこもっている様な文字で、読み返す度に何故か無視できない気持ちになってしまう。
今の私を気にかけてくれているように感じるから。

まるで、私が心の奥底にしまい込んだ事を指摘されている気分にさえなるし。


携帯電話を取り出し、勇気を出して瑞穂ちゃんの実家に電話をかけた。

幸運な事に引っ越しなどしておらず電話は繋がり、瑞穂ちゃんのお母さんから聞き出せた彼女の情報。
今は、この街を出て千葉県で独り暮らしをしている事が分かった。