「小娘!」


「天内君!」


「大丈夫だよ。心配しないで」


 あたしはすぐに立ち上がってお尻をパンパン払った。


 大丈夫。平気だよ。


 こんなの痛くもかゆくもないや。


 大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。


「ああ。大丈夫だ」


 背後から近寄ってきた門川君が、あたしの肩をしっかりと抱き寄せた。


 そして自分の懐に手を入れる。


「ここにある。いくらでも。だから大丈夫だ」


 懐から、また新たな一輪の花。


 門川君の足元に座っている絹糸が、あたしを見上げながらホッホと笑う。


「懐の花がなくなったら、我が外から摘んでこよう。外の花がなくなれば、また次の季節の花が咲こうぞ」


「絹糸……」


「決して尽きることはない。そうであろう? 小娘よ」


 涙と鼻水が同時にブワッと溢れ出した。


 門川君と絹糸の真心がすごく嬉しくて、泣けて泣けて泣けて、しょうがない。


 泣き声なのか、感謝の言葉なのか分からない音が、ノドの奥から溢れて止まんない。


「うっえぇー…… うぐうぅあぁー……」


 大口開けて、ひとしきりワンワン泣いて、それから必死に唇を噛みしめた。


 しっかりしろ! あたし!


 泣いてなんかいらんねーぞ!


 滝みたいに流れ落ちる涙と鼻水を大急ぎでゴシゴシ拭いて、あたしはふたりにニカッと笑ってみせた。