「天内君」


 あたしの心の変化を読み取ったかのように、門川君が問いかける。


「どうやら答えは出たようだな?」


「うん」


 ひと呼吸置いて、あたしはしま子から目を逸らさずに自分の答えを口にする。


「あたし、ここでしま子と一緒に生きる!」


 ギュッとコブシを握りしめながら断言したら、視界の端で門川君が大きくうなづく気配がした。


 そうだ。あたしはとっくに門川君から教えられていたじゃないか!



『じゃあ、キミの中の『しま子』は消えてしまったのか?』



 お父さんもお母さんも真美も、しま子も、大切な人たちはあたしの全てを忘れてしまった。


 でもね……


 それがなに?


 そんなのぜんぜん関係ないじゃん!


 あたしのことを覚えていようが、逆にきれいサッパリ忘れていようが……


 あたしの両親は、あたしにとってこれからもずっと大切な両親なんだし、真美だってずっと大切な親友だ。


 しま子だって、ずっとあたしの大切なしま子なんだ!


 あたしにとって一番大事なことは、なにひとつ変わっていない。


 だから、忘れられてたってかまわない。


 それくらいのことじゃ、あたしの気持ちは絶対に揺るがない。


 あたしは……


「あたしは、今でもこんなにあんたを愛してるよ! しま子!」


 唸り続けるしま子に向かって、負けないぐらいの大声で宣言してやったら、雨上がりの空のように心がスカッ!とした。


 しま子は少しだけ驚いたような表情であたしを見てる。


 でもすぐまた、さっきよりも大きな唸り声を上げて牙を剥き始めた。


 あたしは、そんなしま子の敵意を真正面から堂々と受け止める。


 平気だよ。なにを恐れることがある?


 だって、あれはしま子だ。


 こんなにも大好きなしま子と、再びこうして巡り会えたんだもん!


 なにがあっても、もう二度と離れたりするもんか!