そうして今、この三人の隣にはそれぞれが居て。


 こうして肩を並べて、癒しの雨に身を晒し、互いを労わり合うように微笑み合っている。


 なら、いいんじゃないかな?


 この三人が選んだ道はこれでいい。きっとこれからも、この先へ進んでいける。


 そしてまたどこかへ向かう途中で、こんな思いがけない贈り物のような美しい雨に癒される日が、きっと訪れる。


 そんな未来を信じられるんだ。


「アマンダ、それでは今日はこれで失礼しますわ」


「失礼致します。天内のお嬢様」


「天内さん、また明日」


 今日のいとまを告げる三人に、あたしは縁側に座ったまま笑顔で手を振った。


「うん。また明日」


 あの日、黄昏色の別れ道で、口に出せなかったこの言葉。


 あの時と場所や相手は違えど、望んだ言葉を望むままに言える今日を、あたしは嬉しく思う。


 お岩さんたちを見送ってから、ひとりになったあたしはフッと小さく息を吐いて、中庭をゆっくりと見渡した。


 いつの間にか、天気雨はもう止んでいる。


 夏の間に勢いよく伸びた庭木。苔むした味わいのある石灯籠。調和のとれた敷石の並び。


 わずかに濡れたそれらが、まるで幻のように一瞬だった通り雨の名残りを残していた。


 ……以前は、ここにしま子がいた。


 専用の特大エプロンを身につけて、竹ぼうきを持って、かいがいしく庭掃除をする赤鬼の幻が見える。


 懐かしさと悲しみの混じった胸の痛みを堪えながら、あたしは、愛しいその名をそっと口にした。


「……しま子」


 ねぇ、しま子。


 こっちを向いて。


 お願い。返事をして。


 そしてあたしに、あの日のようにまた花を差し出してよ……。


『うあぁ~』


 振り向いたしま子が、真ん丸な目を細めてニコリと笑う。


 その笑顔に向かって手を伸ばしたら、しま子の姿は消えてしまった。