気がつけば空気をキラキラと彩るような、極細の糸の雨が天から降り注いでいる。


 抜けるような青空から射す明るい日差しが、磨かれた銀の粒みたいな輝きをクッキリ浮き上がらせる美しさに、思わず目を奪われた。


「素敵ですわねぇ!」


 お岩さんと凍雨くんが、大喜びで縁側から庭に飛び出した。


 そしてふたり一緒に両腕を大きく広げて、嬉しそうに全身で雨を受け止めている。


「おふたり共、霧雨とはいえ濡れてしまいますよ?」


 そう言って笑いながらセバスチャンさんも庭に下りた。


 三人で雨の下に並び、楽しそうに会話を交わし合う姿を眺めながら、つくづく思う。


 この人たちは、環境や心境や、様々な物が大きな変化に見舞われて、一年前の自分では想像もつかない状態になってる。


 世界や時間は、川の流れみたいなもんで。


 その流れの中に身を置く人間は、どうしたって同じ場所にとどまることは叶わない。


 思いもよらない出来事が訪れて、予想もしない立場に立たされて、茫然としている間にも容赦なく世界や時間は流れていく。


 だから、先に進むしかないんだ。


『ずっとあのまま、あの場所にいたかったのに』


 そんな悔し涙を流しながら、それでも歩いていくしかない。


 自分ではどうしようもない流れの中を進んでるから、この先どこに辿り着くのかなんて、なんの保証もないけれど。


 それでも自分が望む自分でいられるように、今できる精一杯で、最良と信じる場所を目指して足を進めるしかないんだ。