あたしは急いでオデコを膝小僧にくっつけて、両腕で頭をガバッと抱え込み、いっそう小さく丸まった。


 今のあたしは、たぶんすごく醜い顔をしてると思うから。


 いや、もともとブスだってことくらいちゃんと自覚してるけど、そういうことじゃなくて。


 心の奥の汚い部分が、ぜんぶ顔に出ちゃってると思う。


 門川君にそんな顔は見せたくないし、できることならひとりにしてほしいのに、すぐ隣に門川君が座り込む気配がして、あたしは身を固くした。


 門川君、なにを話しかけてくるつもりなんだろう?


 彼の気持ちをハッキリ聞きたいってあんなに思ってたけど、今のあたしの心は、しま子のことでいっぱいなんだ。


 他のことが入りこむ余裕なんてない。なんだかすべてのことが、透明な高い壁越しに見ている別の世界の出来事みたい。


「…………」


 門川君は、なにも言わなかった。


 顔を隠しながら身構えているあたしの隣で、黙っているだけ。


 いつまでたっても沈黙が漂うばかりで、その重い空気が、すごく気まずい。


 なにかを言われるのは嫌だけど、こんな風になにも話しかけられないことも……嫌。


「キミには、いろいろと謝罪しなければならない」


 急に門川君が沈黙を破って、あたしは不意打ちを食らったみたいにビクッと震えた。


「事情が分からず、さぞかし不安にさせてしまったと思う。本当に申し訳なかった」


 まったくだよ。


 あたしは心の中で、速攻でそう答えた。


 ねえ門川君、こんなことになってしまったのは、誰のせい?


 あたしたちになにも告げずに姿を消してしまった、あなたのせい?


 それとも、自分が『持たざる者』であることを秘密にしてきた水園さんのせい?


 それとも、愛する人を失った悲しみに耐えきれず、暴走してしまった地味男のせい?


 水園さんに秘密を強要したお母さんのせい? 『持たざる者』を疎外する社会制度のせい?


 水晶さんを儀式の生贄にした、地味男のお父さんとお兄さんのせい? 妹よりも姉を選んだクレーターさんのせい?