あぁ……あのときは、謀反の濡れ衣を着せられて追い詰められた門川君と一緒に、逃避行してたんだ。


 当時、門川君とお岩さんは婚約してて、あたしは門川君の冷たい仕打ちに大打撃を受けて。


 そんで本気でブチキレて、『門川君なんてもう知らない! 帰るー!』って絶叫してたっけ。


 ホントだ。なんか状況、似てる。


 あのときもあたしは、いまみたいに散々怒鳴って、精も根も尽き果てて放心状態だった。


 そんで、頭カラッポにして見上げた夜空が、すっげー綺麗だったなあ……。


 そう思いながら頭上を見上げれば、いまもこうして夜空に小さな星が瞬いている。


 プラネタリウムみたいな権田原の星空には遠く及ばないけど、ここにも星はあるんだねぇ……。


 …………。


「あのさ、みんな」


 夜の空を見上げていた顔を下ろして、あたしは、しっかりと仲間の顔を見る。


「あの……ありがとね」


 あたしは、ようやく感謝の気持ちを言葉にすることができた。


 エヘヘッと照れ笑いしながら目をキュッと細めたら、ポロポロと涙が頬を伝って落ちる。


 でもそのくすぐったい感覚が、すごく素敵に思えて嬉しかった。


 この涙は、ただ苦しくて切ないだけの涙じゃない。


 大切な仲間への深い感謝と、あたしの心の中に芽吹いた勇気の味がする涙だった。


「あたし、権田原の里のときも、勝手に自己完結してサッサと逃げ出そうとしてた。でも仲間の思いやりや励ましのおかげで、目が覚めたんだ」


 いまもまったく同じだね。目の前のことしか見えていない単純な頭で、勝手に答えを導き出して、勝手に楽になろうとしている。


 進歩ないなぁ。あたし。


 でもね、おかげさまで、また目が覚めました!


「あたし、門川君に会うよ。会って、自分のやるべきことをやる」


 ヨッと勢いをつけて立ち上がり、あたしは涙をゴシゴシ拭いた。