思わず見上げたその美貌は、ニッコリ微笑んではいるものの、表面通りには受け止められない腹黒さを感じさせる笑顔だ。


「あらセバスチャン、あなたも永久様を埋めたかったんですの? なら一緒に埋めます?」


「いえ、わたくしにお任せくださるのでしたら、永久様を蔦で縛って三日三晩、吊るします」


 執事姿の青年が、サラリと恐怖な毒を吐く。


「永久様の真意も事情もまだ不明ではございますが、どうであれ、少々おイタが過ぎていらっしゃるご様子ですので」


「さようにおじゃりまするなぁ。これは麻呂もお側仕えをする大人として、オシオキをすべき状況でおじゃる」


 おっとり屋さんのマロさんまでが、厳しい顔で頷きながら同調している。


 お、オシオキって、マロさんなにするつもりだろ? 結界の中に門川君を幽閉するつもりとか?


「ボクはいつだって永久様の味方です。でも同時に、いつだって天内さんの味方でもありますから!」

「うああぅ!」

「にいぃ!」


 凍雨くんも、しま子も、子猫ちゃんも、あたしに励ましの声をかけてくれる。


 みんな…………。


 心の中が、あったかいもので一杯で、とても言葉にならない。


 さっきまでのドン底な気持ちが、嘘みたいに軽くなってる。


 ……状況はね、なにも変わってはいないんだ。


 門川君は水園さんと一緒に姿をくらましているままだし、彼のあたしへの想いが、消えてしまったのか変わってしまったのかも、わからない。


 それはやっぱりすごく不安で、とても怖くて、本当に悲しくて怖い。


 それでもさっきからこんなに視界がウルウル潤んでいるのは、そういった負の感情のせいばかりじゃない。


 みんなの気持ちが嬉しくて嬉しくて、涙が滲んでくるんだよ……。


「のぅ小娘よ、思い出さぬか? お前が権田原の里を初めて訪れた夜のことを」


 権田原の里に、初めて行った日の夜……?