「アマンダをここから逃がすわけには、まいりませんわ。だって……」


 大きく広げていた両腕を胸の前でグッと組み、お岩さんは静かに宣言する。


「逃げるに足る要素があるとするならば、それはアマンダではなく、永久様の方です」


 思わず身震いしちゃうほどの、ドスの効いた低音ボイス。


 お岩さんの全身から、負のオーラがユラユラと立ち昇っている。


 厳しい目つきといい、引き締まった顔つきといい、腕組みポーズといい、どっからどう見ても族のヘッドか、ヤクザの組長。


 象さんワッペンつきドレスのギャップがまた、いい味だしてる……。


「アマンダは堂々と永久様に会って、堂々と問い詰めなさい。その返答次第ではブン殴ってもよろしいわ。わたくしだって、事と次第によっては永久様を……」


 お岩さんの低音ボイスに、さらに凄みが増す。


「埋めます」

「ちょ、お岩さん!?」


 あの、軽~く断言なさってるわりに、やたらマジ度が高い口調なんですけど!?


「ふざけた回答をするようなら、たとえ永久様でも容赦はしませんわ。わたくしが埋めます。埋葬します。地の奥底に」


 ひいぃ!? 埋葬宣言!?


 せ、せっかく水の底から生還したのに、すぐさま地底に直送ですか!?


 こんな物騒なセリフを吐き出すお岩さんの唇は、うっすらと笑いを浮かべているけど、目はぜんぜん笑っていない。


 超本気で言ってる。 埋める! この人、門川当主を本気で埋める!


「ジュエル様、問題発言はお控えくださいませ」


 セバスチャンが、お岩さんの隣で呆れた顔をしている。


「軽率な考えで、他人様の恋愛事に首を突っ込むものではございません」


「ええ、わたくしもこれが他人事なら口出しはしませんわ。でもアマンダは他人じゃありませんもの。身内です」