ーーーーーガラッ
保健室のドアが開く。
「……おまえ…またここにいたのかよ…」
幼馴染のタクが私のリュックを持って呆れている。
「いやぁ〜眠くなっちゃって〜」
春のぽかぽかしたある日の昼下がり、私はいつものように保健室の先生とお喋りに花を咲かせていた。
星城高校に入学してから早くも1ヶ月が経とうとしている。
「…いつまでもそんなんだと単位落とすぞ、俺、あとで泣きつかれても知らねえからな!」
「あっ!まって!私のリュッ…」
ーーピシャッ!!
タクが乱暴にドアを閉める。
「……」
「もう、また彼氏くん帰っちゃったじゃない、あなたも毎日毎日保健室なんか来て、、嫌われちゃうぞ〜♡」
「せんせ〜…いつも言ってるけど、タクはただの幼なじみなんだってば!」
タクのことが好きとかありえない。あんなに意地悪で性格悪いやつ。もう1回言っとく、ありえない!幼稚園の頃からずうっと一緒で、高校まで一緒になるなんて思ってもみなかった。
小さい頃のタクの愚痴を先生に聞いてもらってたら、ちょうど鐘が鳴った。
「じゃあ先生、また明日!」
「明日はちゃと授業行きなさい〜、気をつけて帰ってね」
先生にさよならした私は帰路につく。帰宅部の私はそそくさと門を出る。「部活で青春!!」みたいな、もっとキラキラした高校生活を想像してたのに…
「やっほーハナ!!今日もサボってたんだって〜??」
マユがかけよってきた。私がタクのクラスに忘れ物を届けに行った時、たまたま仲良くなった子。出会った瞬間、なんとなく運命感じたんだよね。マユはバスケ部に入っているけど、水曜日である今日は部活が休みなのだ。
「そうですけど…ってなんで知ってるのよ〜」
「だって、月本が言ってくるんだもん、いいなあリア充!しかも月本でしょ!イケメン幼なじみとかすごくおいしい展開…うふふ」
実際にはタクとつきあってないけどクラスが違うのに学校で一緒にいることが多いからか、私たちは名物カップルのように扱われている。
タクは普通にイケメンだし、そう言われて悪い気はしないけど、向こうはどう思ってるんだろう…
「あっ、そういえば」
毎週の恒例行事になった放課後カラオケ。マユの部活の休みは水曜日だけだから、たくさん話をできる大切な時間。
「ハナってさぁ、アキと付き合ってたの?」
「!?」
なんで、それ、、
アキは私と同じ中学からきたモテ男だ。小5から中2まで付き合っていた、私の初恋の人。タクの親友でもある。2人は今でも仲良くしている。本当に本当に大切な2人だった。
いつからだろう、3人の歯車がずれ始めたのは……