「…古宮。」
遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。
そして後ろからは私の背中をつついてくる。
もう…誰?
相川のかまちょなんだから。
でも、もう少し…寝かして。
昨日は徹夜でゲームをしてて寝不足なんだから…。
「古宮!」
「あーうるさいな。だから寝不足だって…。」
え…。
この状況に理解できない。
みんなの目線が冷たく怖い。
「授業中に爆睡して。先生にうるさいとは良い度胸じゃないか…。」
担任の先生の先生が目の前にいる。
黒板にはよく分からない図形が書かれている。
「ほえ…。」
まさかの夢オチ…。
間抜けな声が自然ともれてしまう。
「お前、高校行く気あるのか?受験生のくせに授業中に爆睡とはもう…。」
「いや、その…昨日は少し徹夜しててつい…。」
「徹夜…ほう、今日の授業の予習とは関心だ。ならこの問題も楽勝だな。黒板に書いて来てもらおうか。お前ら!今日の授業は古宮が教えてくれるそうだ!しっかり聞くように!」
予習とも復習とも言ってないし!
変なこと言うからクラスの子にめっちゃ睨まれてるし!
あぁ!現実は残酷だ。
夢だったら今頃、相川とラブラブ真最中だったのに!
もちろん、今までのは夢。
現実はうまくいかなかった。
まぁ、相川と付き合ってたけど。
もう別れたしね。
向こうから告ってきたのも事実だ。
って言っても小学生があんなロマンチックなこと考えられる訳がないし。
手紙(それもノートの切れ端)で4文字それもカタカナで『すきです』としか書かれてなかった。
ロマンチックの『ロ』の字もない。
そもそも、顔が熱いとか胸が苦しくなるとか少女漫画の読み過ぎ症状。
そんなことなったことないよー。
小学生の私、美化しすぎ純粋すぎて面白いぐらい。
まぁ確かに少しは純粋だったけど。
妄想ぐらい良いふうになってもいいよね?
だって今の私は
中学3年生、受験生で勉強、勉強。
恋とか夢とか漫画の話。
クラスはビッチばっかり。

「はぁ〜やっと終わった〜。」
「また妄想かよ。あいかわらずキモいね〜。」
「うるせーよ。オタクが。」
中学生になった私は大人になったと思う。
初音は派手になってしまって今では不良グループにいる。
パンツが見えるんじゃないかって言うぐらいスカートを短くして、ピアスも付けて髪の毛は金髪、濃い化粧にクソほど大きいカラコン。
噂で聞くかぎり相当、ヤりまくりらしい。
たまに心配になるけど私とは別世界の人間。
一切、喋らない。
挨拶もしない、会ってもすれ違って終了。
風歌も私立中学校に入ってリア充してるらしい。
1年のとき風歌の学校の文化祭に行って風歌に会ってびっくりした。
眼鏡も矯正も外して髪も伸ばしロングサラサラヘアー。
目も大きい。顔のカタチも整っている。
化粧とかで誤魔化してるわけでもないようで素の美少女だった。
ただ…性格も変わってしまっていた。
その学校のクラスの男子は全員下の名前呼び。
スカートは必ず、膝より少し上でニーハイソックス。
程よい裏声に男嫌いアピール。そして家庭科部に所属。
すげービッチになっていた。
男狙い感半端ないのに女子には仲間外れにされない。
まぁ、その代わり陰でこそこそ言われるだろうけど。
そしてこの前、私の学校の増野と付き合ってる。
趣味が合うらしいのだ。
って言っても浮気してるかもしれないけどね…。
そう考えると初音より風歌の方がだいぶ腐ってるって私は思うんだけど。
とりあえず、2人は別世界の人間になってしまった。
私は相変わらず地味なままだ。
新しく出来た友達の莉乃とずっと一緒にいる。
まぁそれ以外に友達がいないだけなんだけどね。
それでも小学校時代より本音を言える友達で私はスキだけどね。
莉乃はいわゆる腐女子。
そのため、趣味が合わない。
「ちょっと真姫!廊下にホモが…。」
莉乃が廊下を指差す。
「ちょっと莉乃、ホモって…。」
「真姫にはこの美しいホモが見えないというのか…。」
幽霊みたいに言うな。
「美しくない。むしろ少し気持ち悪い。」
「気持ち悪い!?なんでこの素晴らしさに気付かないの!?私の薄い本を貸してあげるからしっかり読みなよ。興奮するから。」
「鼻息荒い…って言うか興味を持っても興奮まではいかないと思う。」
「それは真姫の勉強不足。」
なんの勉強だよ!
「そんなことより見て!相川と増野のカップリング!ものすごい萌えるでしょ!?」
「目が怖いよ!だいたい、相川も増野も彼女いるじゃん」
そうだよ…相川は私と別れてすぐ彼女いるって聞いた。
まだ続いてるか知らないけど。
増野はどうやって知り合ったのか風歌と付き合ってるし。
「なに言ってるの!?増野は知らないけど相川は彼女いないよ!なんかね…噂のせいで彼女をつくってもすぐに別れてしまうんだって。」
「噂!?」
なんか嫌な予感がする…。
「小学校のとき、あんたと相川が付き合ってるってそのせいで全然付き合われないんだって。」
あの噂、まだ続いてたんだ!
だって5年前だよ!
「あんたも乙だよね。」
「乙って…人事ね。」
「だって私には関係ないし。恋愛なんて興味ないし。2次元なら別だけど。」
「2次元ね…私もそっちの方向に行こうかな…。」
そしたら少し楽になったりしてね…。
「真姫!!ついに分かったか!よしじゃあ、今日は家に寄って来い!」
「え…。」