「と言うことでリレーの選手はこの4人に決まりました。みなさん拍手。」
先生の声を合図に周りから盛大な拍手がおこる。
リレー選手の中には風歌が言ってた通り相川くんもいた。
あ…間違えた。
私は今日から男子にくんを付けないように気をつけないと…気持ち悪いらしいから。
でも、相川は自分から立候補したんじゃなくてクラスの女子に言われて出た感じだった。
「真姫、本当に出なくてよかったの?トイレから戻ってきたとき少し変だったけど。」
心配そうに私の顔を風歌が覗き込んでくれる。
「ん?大丈夫!」
私はなるべく明るい声で返事をする。
別に好きなんて嘘だし。
少しでも好きって思ったのもきっと何かの勘違い。

「古宮!」
1時間目と2時間目を開けて25分休憩。
風歌と初音に大縄跳びに誘われたけど苦手なものは苦手だから、少し控えめに断った。
って言っても1人はやっぱり暇だ。
漫画は読むけど基本的、本は嫌いだし。
なので今は1人で裏庭に行こうかなと思ってたところを相川に止められたと言う訳だ。
「1人でどこに行こうとしてるんだ?」
「裏庭だけど…。」
「じゃあ、俺も行く。」
じゃあって何よ。
まぁいいけど。
1人で行っても暇なだけだし。
「…。」
「…。」
しかし、会話もなく気まずいだけだった。
これなら1人の方がマシよ!
何か喋らないと…。
「他の男子と一緒にサッカーしなくていいの?」
「あぁ…今はそういう気分じゃない。」
「なんで?リレーの選手選ばれて良かったじゃん!」
「そのことなんだけどさ…。」
相川が言葉を濁す、まるで言うか言わないか悩んでいるようだ。
「何よ…気になるじゃない!まぁでも、別に言いたくないなら言わなくてもいいけどさ…。」
「なんだそれ、古宮って本当に面白いよな。一緒にいて飽きないわ。」
面白いか…。
まるで友達みたいな言い方。
いつもなら嬉しいはずなのにあんまり嬉しくない。
「いや、リレーのことなんだけどさ…。やっぱり俺、出るのやめようかな…って。」
「なんで!?」
急に話題をぶっこんできた相川に焦ってしまう。
「あぁ…俺、女子が嫌いなんだよな。」
女子が嫌い?
私も女子だよ…?
「じゃあ…なんで相川は私と一緒にいるの?」
「古宮は特別。」
癖なのか相川が照れたように笑う。
特別って…。
私だけ女子として見てくれないってこと…?
「あのさ、相川。」
「いつものように君付けで呼ばないんだな?」
「うん。」
「なんで?」
「だって…短い方が呼びやすいから。」
女子に気持ち悪いって言われたから。
なんてまるで愚痴を言ってるようなのでやめた。
「ふーん、それなら相川じゃなくて恭弥って呼んだら?そっちの方が呼びやすいでしょ?」
「…え?」
恭弥って相川の下の名前!?
「俺も古宮より真姫の方が呼びやすいからそう呼んでいい?」
「そういうのは恋人同士になってからじゃないと…。」
「じゃあ恋人になっちゃう?」
恋人!?
いつもと同じように言ったから一瞬聞き間違えかと思った。
でもその後の言葉に私はかたまることしかできなかった。
「言ったじゃん?特別だって。」
特別ってそっち!?
さっきまでの顔とは嘘のようにいたずらっぽい笑みを見せていると同時に学校のチャイムがなる。
「チャイムなったじゃん。早く戻らないと先生に怒られるぞ。」
その言葉だけを言い残して逃げるようにその場から去っていった。

「それって告白じゃない?」
学校に帰るなりランドセルのまま自分の家ではなくその横の家へ行く。
家が横の幼馴染みの明音に今日のことを話すためだ。
明音は私立の小学校に行っていて頭は賢くて可愛い自慢の幼馴染みだ。
風歌や初音には今日のことは話していない。
やっぱり同じクラスだし好きって設定になってるのに付き合わないかもしれないなんて矛盾点が発生するので言う事には抵抗があった。
「どうしよ…なんて言えばいい!」
「それは自分で考えないと。」
「まだ小学生だよ!そんな付き合うなんて…。」
いつも幼稚なことしかやってないのに急にオトナぽくなっっていたし…。
「あのね…あんたはもう少し勉強をした方がいいよ。これ貸してあげるから。」
そう言って本棚から大量の漫画を取り出した。
「なっ何これ…。」
「少女マンガよ。あんたはもう少し大人の階段を上りなさい。そこで大切なのはやっぱり恋なのよ。」
「鯉?」
「2、これを読めば少しはわかるんじゃない。自慢しに来たなら帰った帰った。」
自慢じゃなくて本気で悩んでるのに…。
今日の授業全然頭に入ってこなかったし…。
半強制的に家から追い出される。
だいたい、相川とはあんまり話したことないのに付き合うとか告白とか…よくわからないよ…。

「…おはよう。」
「おはよーってどうしたの?!顔色悪いよ!」
昨日の夜、明音に借りた漫画を一気に読み終えたのだ。
すごい量だったから昨日は全然眠れないままだ。
なかなかと面白かった…。
少女漫画って今まで読んだことなかったけど結構ハマる。
それに主人公の気持ち結構わかるけど…。
主人公は全員、小学5、6年生。
明音がそういうのを選んで貸してくれたのかな…って言うかキスシーンが多かった。
なんで付き合った瞬間にキスなんてするんだろう。
その後、別れたりしたら気まずそう…。
それにそんなすぐにキスをするなんて軽そうだし。
明音が言ってた恋とはオクが深いな〜。
「おはよー真姫。」
「あぁ…おは…って相川くん!」
「あれ?俺のこと恭弥って呼ばないの?呼びづらくない?」」
なっなんか昨日と性格変わってるし!
「もしかして、体調でも悪い?顔色も悪いし。保健室にまた着いて行こうか?」
「へ…いや、あっ…。」
なんでこの人は昨日あんなことを言っておきながら平気な顔を…。
私は2人で顔を見るだけでも…。
「顔が熱い!」
急いで教室から出て保健室に入る。

「あら、どうしたの!顔が真っ赤じゃない!」
勢い良く入ってきた私に先生が目を丸める。
「真っ赤?」
そういえば少女マンガに好きな人といると顔が赤くなるっって…。
「先生、今から職員室行くけど少しベットに横になりなさい。」
「はっはい…。」
もしかして…勘違いとかじゃなくて本気で純粋に相川のことを…。

「真姫、大丈夫か?」
「相川…。」
保健室の時計が11時を指している。
いつの間にか爆睡してしまったらしい。
それに相川も…。
「なななんでここに!?」
「いつまでたっても教室に戻って来なかったから。寝顔、可愛かったよ。」
顔がまた熱くなる。
「なんでまた、普通にそういうことを…。そういうのは…」
「好きな人に言ってるんだけど?なぁ、お前からの返事は?」
返事を急かしてるのかじっと私の方を見つめてくる。
「わかんない…でも、多分好き。」
さっきよりも顔が熱い。
「多分ってなんだよ…。」
そう言って嬉しそうに笑った。