「どーしたの、真姫。」
「いや…別に?」
次の日もずっと顔が熱いままで風歌と初音の会話も上の空だった。
「本当に〜、なんか昨日の昼休みから変だよー。」
「あっ!もしかして…。」
風歌がニヤニヤしている。
「なっなに?」
「相川くんと何かあったんでしょ」
相川くん!
その言葉を聞いた瞬間、顔が熱くなる。
「もしかして告白でもした?」
「まっまさか…滅相もない、絶対、失敗しちゃうよ!」
って何言ってるの!それじゃあ私が相川くんのこと好きみたいじゃない!
「えーそんなことないよ。真姫、可愛いし告白うまくいくよ!」
「そんなこと!風歌の方が可愛いよ!」
風歌は身長は低くてピンク色の眼鏡をかけていて歯に矯正をつけている変わった子で可愛いとは言いづらいけどとても明るくてクラスの男女構わず人気者だから流れ的にそう言わないと仲間外れににされてしまうかもしれない。
「ねぇ〜いつ告白するの〜。」
初音。が告白を推してくる。
「まだ、そこまでは…それに風歌も初音も相川くんのこと好きなんじゃ…。」
「え〜好きなんて言ったっけ?確かにかっこいいけど…。」
初音がキョトンとした顔で私を見る。
「え?」
好きな人みたいな話をしてたから好きなのかと…。
「大丈夫だって!応援してるよ!頑張りなよ!」
「うん…ありがとう。」
「じゃあ、早速!」
「え?それはまだ早い…もうちょっと待って。」
好きかどうか分からないし…。
それになんで初音はこんなに私の告白を急かすんだろう。

「ふぅ〜…お腹いっぱい。」
給食の時間、初音はあんなにも給食を減らしたのにお腹をおさえている。
女の子らしいなぁ~私なんて全然足りないだけど…。
ちょっと大げさだけどパンが2、3枚入る余裕はある。
1人でおかわりするの少し恥ずかしいし…。
「カレーもう少し食べたいなぁ〜。」
「え…?風歌も!一緒におかわりしよう!」
「うん!」
風歌と横に並んで前に行く。
「やっぱり男子ばっかり。」
と言っても5人しかいないだけど…。
その中に相川くんもいる。
「うちのクラスは小食の子が多いからラッキーだよな!」
確かに今日のパンは10枚以上残っている。
「パン…人気ないね。」
「だってコッペパンのくせにジャムもバターも付いてないんだよ!真姫は何を増やすの?」
パン食べるって言い出しづらいなぁ~
「パンって2枚食べちゃダメかな…。」
「え!?そんなに食べるの!」
「コッペパン好きなの…。」
「でも、いいと思うよ。じゃあ私カレーだから。」
風歌がカレーの列に並ぶ。
相川くん以外はみんなカレーの列に並んでいる。
「おぉー古宮もパン?じゃあとってやるよ?何個?」
前ですでに3つもパンをとった相川くんが話かけてくる。
昨日の保健室のことを思い出すとなんだか照れくさい。
「いい。自分で取るから。」
それに2つも食べるなんて恥ずかしくて言い出しづらかった。
「古宮、2つだってよ。さっき、言ってた。」
カレーの列に並んでた男子が横から顔を出す。
風歌とさっき話してた会話を聞かれてたらしい。
「女子のくせにそんなに食うのー。」
「古宮、大食いチャンピオン出れるんじゃね?」
周りの男子が私をからかう。
…何よ!私はコッペパンが好きなだけで。いつもはもっと食べる量は少ないもん。
頭の中で言い訳を考える。
一気に頬が熱くなり泣きそうになる。
「やっぱりいらないから…。」
相川にボソリと呟き、すでに食べ終わった食器を片付ける。
「古宮、食わないの〜。」
「まぁ、体育の時間お腹なったら面白いからいっか。」
クラスの男子の言葉に一気に笑いがおこる。
何が面白いのよ!
涙が出そうなのを必死に抑えながらさっさと教室に出た。
「真姫!」
風歌の呼び止める声がする。
でも、それを気にせず私は近くのトイレに入りこんだ。
恥ずかしくてムカつく。
2つの気持ちが一気に襲ってきて涙に流すことしか出来なかった。

泣き疲れてふと気がつくと、掃除終了のチャイムがなって今は昼休み。
ここのトイレ掃除を担当の女子たちがサボったおかげで掃除時間は誰も入って来なかった。
絶対変な奴と思われてるよ…。
とりあえず、裏庭に行こう。
あそこはグラウンドみたいに人が多くないし。
まだ1人でいたい。
私って結構、精神弱いかも。
すぐ傷つくし案外、繊細…?
そう考えたら良いふうに聞こえるけどただ、弱虫で泣き虫なだけなんだけどね…。

「古宮!」
「相川くん!」
裏庭に来ると意外にも相川くんがいた。
「やっと見つけた。これ、あげる。」
相川くんが手に持っていた何かが包んでいるナフキンを私に渡す。
「何これ…?」
「いいから。」
素直にナフキンを受け取り開けてみる。
「え…。」
そこには3つもコッペパンが入っていた。
「あげる。」
「いらない。」
「即答かよ!」
だってこれ…分からないけど、相川くんがおかわりしたやつっぽいし。
「泣くほど欲しかったくせに…。」
「違っ!あれは欲しくて泣いてたんじゃなくて!乙女心わかってない!」
「乙女心!よく言うわ、コッペパン3つも食おうとしたくせに。」
「そういうふうに言うから泣いてるんだ!」
それに3つじゃなくて2つだし。
「ごめんごめん、これもやるから許せよ。」
そう言って私の手のひらに飴をのせた。
「お菓子持ってきてること内緒な!」
相川くんが唇に人差し指をあてウインクしてくる。
「可愛い…くなんかない」
慌てて本音を漏らしそうになり、すぐに言い換える。
相川くんといると自分が思ってることをすぐに口に出してしまいそうになる。
「かっ可愛いと思わえたくないし!」
怒ってるように見せてるけどめちゃくちゃ顔は真っ赤だ。
「いいから!パン食えよ!じゃあ!」
「待って!」
早々と立ち去ろうとする相川くんの腕を掴んでしまった。
「なに?」
なんで私、相川くんの腕を掴んだろう。
何か言わなくちゃ…。
「1つだけ…あげる。」
もともと相川くんのなのに何偉そうに言ってるんだ私!
なんて可愛気がないんだろう。
「サンキュー。」
それなのになんで相川くんはそんなにも嬉しそうに笑うんだろう…?