「真姫って好きな人いるの?」
「え?」
小学5年生、春。
友達の風歌と初音のその質問に私、古宮真姫は本当にその返答に悩んだ。
好きな人なんて考えたこともなかった。
だって私はまだ小学生なのに恋愛なんて早いと思ってたから。
「やっぱり相川だよね〜。」
「うんうん!イケメンだし、サッカー出来るし、それに優しいし!ね!真姫!」
相川くん…よくわからないや。
確かにかっこいいとは思うけど好きとかじゃない。
好きとかよくわからないし…。
「よくわからないよ…。」
「え…〜?真姫のおこちゃま!」
おこちゃま…。
そのときはその言葉に少しカチンとしたぐらいの軽い気持ちだった。
だから…。
「いるよ!相川くん!相川くん好き。」
「へ〜真姫って相川くんのこと好きなんだぁ〜。」
「応援してるよ〜付き合えたらいいねぇ〜。」
「つっ付き合う?」
そんなこと考えもしなかった。
付きあうってなんだろう?好き合うこと?
それなら私に付き合うことはできないかな?
好きな人なんていない。

「真姫!縄跳びしよ〜。」
休み時間、早々と掃除を終わらせるとすぐに風歌と初音が私に近寄ってきた。
「うん!」
大縄跳びは嫌いだけど、そんなこと言うと仲間外れにされちゃうかもしれないから私はすぐに大きく頷いた。
「じゃあ、違う人も誘おう!」
「下野さんも誘う?」
下野さんは休み時間も自分の机に向かってひたすら本を読んでる子だ。
すごく地味で根暗で誰も近寄ろうとしない。
「え〜嫌だよ!」
「だっだよね~」
私もなるべく違和感のないようにすぐに応える。
「じゃあ、早くグランド行こう!」
下野さん…。
でも、仕方ないよね!あの子あそうなる運命だったんだから。
そういえば下野さんってもともと明るい子でクラスの中心的人物だったっけ?
あの子の人生を変えたのはすごく仲良しの幼馴染みでその子が転校してからあんなに暗くなってしまったのだ。
初めの方は下野さんの友達も下野さんのことを慰めてたんだけど…いつまでたっても立ち直らないからド派手グループからその子の存在は消えた。

「い〜ち、に~、さ~ん……あ〜また真姫!ちゃんとしてよ〜。」
「本当!回させてもちゃんと回すことできないし!ちょっと、輪から出て見てて。」
「…ごめん。」
やってしまった…大縄跳びじゃなくて短距離走なら行けるのに、それ以外は苦手だけど…。
ってそんなこと考えても意味ないか、現に私が抜けてからもう14回も跳んでいるし…。
「危ない!」
「え…。」
女子たちが跳んでいるのをぼーと見ていると私に向かってボールがとんできた。
「いっ…た〜。」
見事に顔面に命中する。
うわ〜最悪…鼻血出てるし…。
すぐさま、縄跳びをやめてこっちによってくる。
「真姫、大丈夫!」
「うん…なんとか!」
「ちょっと!誰よ!謝り…って!相川くん!」
「ごめん…大丈夫だった?鼻血出てる!?保健室に…。」
「う…ううん!大丈夫!私たちが保健室に連れて行くよ!」
え〜態度代わり過ぎ…。
それに鼻血出たの私なんだけど!?
なんであんたらだが怪我したみたいに…。
「いや…俺が連れて行く。古宮を怪我させたのは俺だしな!」

「失礼します…って先生いない。」
保健室には先生がいなかった。
「はい。ティッシュ。」
鼻が少しひりひりする。
すごい勢いでとんできたものだから顔も熱い。
「顔…赤いけど大丈夫か?」
「フツーに痛い…。」
「可愛い気ないな〜、そこは嘘でも『ごめんね…私があんなところで突っ立ってたから…。』とか言っといた方がいいぞ。」
相川くんが裏声を上手く使いこなし目をパチクリしてる。
それで一気にキャラが変わった気がする。
あまりの変わり用に少し笑ってしまった。
「何それ!そんな奴、本当にいたらまじでキショいでしょ!」
「やっと笑った。」
「え…?」
「いや、だって縄跳びやってるとき退屈そうだったから…。」
相川くんが照れたように笑う。
「え〜だから、わざと私にボール当てたの!?」
「違う!っていうかお前、女子といるときとキャラ変わりすぎだろ!毒舌すぎ…。」
「仕方ないよ…女の子、怖いもん。1人になりたくないし!」
「じゃあさ…1人になったら俺が仲良くしてやるよ。」
「いや、男子は無理。相川くんが女子だったら。」
「いや、それこそ無理だわ。でも…。」
相川くんがそこで言葉をとめる。
「俺はそっちのキャラの方が好き。」
そしてまた、照れたように笑った。
え…、なにそれ…。
一瞬、意味を理解出来なかった。
胸の鼓動が早くなる。
「わっ私は…女の子が好きなのー!」
なっなななに言ってるんだ!私のバカー!
言葉が成り立ってないじゃん!
恥ずかしくなってすぐに保健室を出る。
「古宮!?」
もう、最悪!
絶対、変な子と思われた!
顔、熱いし。
相川くんもよく、あんな恥ずかしいことを簡単に…。
好きとかそういうのは恋人同士が言うことであって…不純すぎる。