「…ありがとう。もう大丈夫だから」
そう言って俺から離れる。
表情を見ると、かなりすっきりしたみたいだった。
俺は橋本さんに話しかける。
「望愛」
「………え?」
俺はこの話が終わったら橋本さんを『望愛』と呼ぶと決めていた。
「野村くん、さっきの話聞いてた?」
「聞いてた。だからこう呼んでる」
「私、自分の名前が嫌いって言ったよね?」
「うん。でもそれは両親に望まれてない、愛されてないって思ってるからだろ?そうじゃなくて、本当は両親にもちゃんと望まれてる、愛されてる。そう思っておじいさんとおばあさんは名付けたんじゃないの?ってこれはあくまで俺の憶測に過ぎないけど」