「ちょっと〜。漫画読んでないで手伝ってよ。早くそれ運んで!」
「漫画じゃなくて文庫だよ。いらないものか吟味してる」
「もー!お父さんも!いつまでタバコ吸ってるのよ!早く手伝って!!」
おふくろはせかせか動き回り、おばあちゃんの遺品を整理をしていた。
俺は文庫本をぱたんと閉じ処分コーナーに置いた。
周りは山。
一番近いコンビニまで車で20分。
おばあちゃんはこの土地で生まれ過ごした。
のどかな田舎で生まれた親父は、医者を志し家を出た。
研修医として働き始め、若くしておふくろと結婚。
俺が生まれた。
田舎だから仕事もなかなか見つからないし、俺の面倒も1人じゃ見きれないため、おふくろはおばあちゃんに俺を預けて働きに出た。
その頃の親父の顔はよく覚えていない。
研修医っていうのは忙しいらしく、年に1回、会えるか会えないかだった。
だから俺がおばあちゃん子になるのはごく自然なことだった。