パッと顔を上げる。
なにもない。
風に揺れる木の影が窓に映っているだけだった。
「・・・・・・ん?」
その時、視界の隅でなにかが光った。
視線を向けると本棚の奥で光ったようだった。
きっと、あの缶の箱だ。
急いでそこに向かい、手前の本を出し奥から銀色の缶の箱を取り出した。
まじまじとそれを見つめた。
けれど冷静に考えると錆びているし本棚の奥の方に入れてあったし、光るわけがない。
「・・・・・・気のせいか」
そうだ。
おばあちゃんの声が聞こえたのも、缶が光ったのも。
全部気のせいだ。
・・・・・・けれど。
一瞬、とても安心した。
怖さなんかなくて、純粋におばあちゃんの声をもう一度聞きたいと思った。
おばあちゃんに「遼ちゃん」て呼ばれたいと思った。
・・・・・・嬉しかったんだ。