別れて風化させれば、お互いのためになる。
今まで十分に彼に幸せをもらった。
たったの三文字だ。
“別れて”
この三文字が、好きより出てこない。
「別れて」
壁を支えに歩いていた星哉に向かって
やっとのことで、言っていた。
自分の口から自分の意思で言ったはずなのに
言ったとたん、押し潰されるような感覚に
沈みこみそうになる。
でも、私ができることなんてそれくらいだから。
「向日葵、何かおかしいよ?」
依然として、状況を理解してない
顔をして彼は私の方を見つめた。
そんな顔で言われると胸が苦しくなる。
私だって、こんなこと言いたくない。
「それ、本気で言ってるの?」
「本気……じゃ」
否定したいし、でも肯定もしたい。
そんなどっち付かずの気持ちが情けない。
割りきって別れることもしたくなければ
この関係にピリオドを打つべきなのに
それが出来ない面倒な自分がいる。
この一言を、言わないと始まらないのに。
「俺は、別れたくない。向日葵は、本当にそう思ってるの?」
真摯な眼差しで言われて目を剃らしてしまう。
そんなこと言われると
何て言えばいいのか分からなくなる。
そして、微かな期待をしてしまうのだ。
叶わないと、分かっているはずなのに。