「萩本さんの未来をお前は奪いたいの?」
え……?
ドアノブから手が滑り落ちた。
なんで……そんな事を考えるの?
別に、奪ってないでしょ?
そんな考えとは裏腹に私の視界はぐらぐらと動揺してゆれる。
「奪いたいわけないじゃん」
「お前は死んだら終わりだけど萩本さんにはその先があるんだよ」
「そんなの分かってる」
星哉の声が低くなるのが分かった。
死んだら終わるって……。
「分かってない、萩本さんが本当に好きなら、他にすることがあるだろ? 残りの三ヶ月ずっと頼ってから、死んで突き放すわけ? それで残される萩本さんの事を考えたことある?」
早口でどんどん飛び出る彼からの罵倒。
それは、何もかも引き裂いてしまうのに十分な強さで。
そんなことしたら、脆い私たちの関係はすぐ壊れちゃう。
私と彼を引き裂こうとしないでよ。
私を言いがかりにして結局そんなことなの?
ちょっとは、話せるようになって嬉しかったのに。
「やめてよ!」
気付けば、ドアを開けて武田君に向かって叫んでいた。
「私が可哀想だの、残ったら私がどうなるだの、本当に好きならどうだの!」
言葉は堰を切ったように溢れてくる。
「萩本、さん」
頬が冷たい。