「ってことは病院に?」
それだと、悪いな……。
かぶっちゃうし。
一階のカフェで休んでから、行こうかな。
「そういえば、栄夏はどこに行くの?」
通学なら、彼女は確か反対方向だったはず。
「習い事。塾に通わされることになった」
不機嫌そうに口を膨らませる彼女におどけて手を合わせる。
「……御愁傷様です」
「向日葵は頭のつくりがよろしいもんね」
「いやいや、よろしくないですよ」
「よろしいでしょうが!」
なんだか変な会話になっている気がするけど、
気にしない、気にしない。
「でもそれは、星哉のお陰かも」
「吉岡?」
「うん。教えてくれるから」
「なるほど、専用の家庭教師がいると」
「栄夏が言うと嫌らしく聞こえる」
「嫌らしく言ってるもん……それより」
幾段か栄夏の声が低くなった。
「何?」
「優翔のこと、追っかけてね」
「何で?」
「話すことが気になるから」
「ふうん」
男同士でも聞かれたくないことはあるんじゃないかなあ。
そんなことをちらっと思ったけど、私も気になったし
何より、栄夏の勘はよく当たる。
間違った方向は絶対に差さない。
差したところを今までで見たことがない。
「あ、無理にしないで」
こうやって彼女がひく時はだいたいその勘は当たっている。
「分かった、ばれないように頑張る」
話の区切りに、ちょうど私の降りる病院の最寄り駅がアナウンスで流れた。
「じゃあね」