「ははっ、それもそうだな。ごめんな」
武田君は、可笑しそうに笑って私の顔を見た。
「星哉はああ見えて、気配り上手で前に出たがらないんだ」
「ごめん、何一つ、イメージと結び付かない」
星哉が、気配り上手?
そんなこと、ないと思う。
前に出たがらない?
出たいの間違いだろっ。
「バカバカ、スパイクを打って点数を取るんじゃなくて、相手からの攻撃を受けるだけ受けて、スパイカーの為にボールを上げる」
「いやいやいや、星哉は前者でしょ」
「まあ、スパイカーが独りよがりなわけじゃないよ。ただ、星哉はそれだけ回りを見れるやつってことだ」
「新鮮な話……」
「水と油ってどうしてもくっつかないだろ? 部活内で揉めた時には必ず卵さんがいる」
「中和役ってこと?」
「そう。それが、星哉」
「武田君、誉めすぎじゃない?」
「まさか。事実だもん」
「……そうなんだ」
まだまだ、星哉のことを知らない。
美結のことで、沈んでいた気持ちが武田君のお陰で、元に戻った。
「ありがとね、武田君」
「星哉、存在感ありすぎだよな」
「そうかも。私も頭の中、八九%星哉だし」
「それ、百にしてやれよ」
「確かに」
思わず、笑いが両方から零れた。
気づけば、あっという間に私の家の近く。