+*星哉side*+
「吉岡」
「何、長瀬」
後ろを見れば、丸い目が俺を見上げていた。
「どうしたの?」
「いや、やっぱり何でもない」
長瀬は、良くも悪くも正直な人だ。
何か、思っている時はすぐに顔に出てしまう。
長谷川にたいしての鋭い目。
いつものふんわりとした長瀬らしくなかった。
「長谷川がどうかしたの?」
もう少し突っ込んで聞いてみると、黒い目をくるくるさせて少し考えてから長瀬は小さい声で言った。
「美結に気を付けて」
「え?」
仲の良い間でそんなことがあるのかとびっくりする。
女子は正直、よく分からない。
特に長瀬は何を考えているのか分からない時があるから、少し怖いのも事実だ。
「とにかく、注意してて」
強い口調にただ首を縦に動かすしかなかった。
タイミングよく、話の切れ目に予鈴がなる。
一時間目の理科の授業が俺の上を流れていく。
死ぬ人は遺書を残すものだよな。
ふと思いついた。
俺がいなくなってからでも向日葵に何かを伝えられるなら良いことだよな……
携帯とかに残してもいいかも。