私は、栄夏と二人で授業前の休みに
人気のない裏庭にいた。
話したいことがあって、
まとまらないかもしれないけれど聞いてほしい。
そう言えば、栄夏は黙って頷いてくれた。
「私さ、ちゃんと恋してるんだよ」
「うん」
「でも、怖いんだ」
……星哉がいなくなったら私はどうなるんだろう?
「美結に取られることが?」
「ううん、それもそうなんだけどね」
「けど?」
「私の未来に彼がいないことが怖いの」
「未来に吉岡がいないと生きていけない?」
ううん。
そんな、甘い言葉を言いたいんじゃないの。
「何年か経てば他の人が隣にいるかもしれないことが。こんなにも星哉を好きなのに、それが風化してしまいそうで」
もっと先にはこんな
学生時代の恋愛なんて忘れてしまうかもしれない。
ひょっとしたら、
星哉との思い出さえ
消えてしまうかもしれない。
それがとても怖かった。
時間と共に私が立ち直る程、
彼の存在が薄くなっていって。
彼に照らされていた至福の日々は
がらくたの中に埋まっていってしまいそうで
こんなに想ってるはずなのに
どうしてそうなるんだろうと思って。
風化した記憶を前に、
新しく出会った彼氏や男友達に
学生時代、恋をしなかったような風に
言いたくない。
言わなかったとしても、
ちゃんと胸の中で彼といたって
自信をもって言いたい。