「嘘じゃないよ」





星哉は気付いてない。
皆が揃って認められないくらい、
私たちにとっては衝撃的な話だってことに。










星哉の存在が大きいということに
気付いてないにちがいない。









本人が気付くわけもないんだけどね。
あなたがいなくなることは、
私にとってはもっと大きいんだよ。






「今日は授業受けるけど、
明日から死ぬまでここには来れない」



空白になり損ねた時間は、
もっと空気を嫌な色に染めていく。




そんな言葉、
好きじゃないクラスメイトだとしても
いきなり言われたら嫌だし
どうしたらいいか分からなくなる。





けれど当の本人は
やはりそんなことも考えられないくらい
事実を伝えるために必死だった。




 

「死ぬまでって……」





美結の呟く声が聞こえた。
その声が含む微妙なニュアンスに
不安になりながらも
私も同じ気持ちを抱く。



何回言われても
実感がわかないし嫌な言葉だ。





「まあ、来れないのは本当」






「バレーだけやれたりとかしないの? 
今週の土曜、試合じゃんか」




バレーの試合。
私も幾度となく見てきた。
星哉はリベロなんだ。    






エースって訳じゃないし、華ではない。







相手からのスパイクを
まるで地を這うように粘っこく取る、
そんな目立たない役。






腰のあたりや腕に
摩擦でつくられた怪我があるのを、
私だって知ってる。






それだけ、
熱を注いでいたバレーからも
いきなり離れなきゃいけないんだ。





身を投げ出して、ボールを拾う星哉は
最強に格好いいのに、
もうそれを見ることはできない。





そんな役をこなせる人無しに、
スパイカーはスパイクを打てない。

 



そうなると、試合の苦戦は安易に予想できた。