「……向日葵」 
 




制服の裾を引っ張る星哉は
やっぱりつらそうだった。






同情して一緒に嫌だねって言うのは簡単。
でも、今ここで星哉を勇気づけたり、
その背中を押せるのは私しかいない。






「自分で言わないと駄目だよ、星哉なら大丈夫だから」




根拠や自信がないときほど
大丈夫って使うし、
今もそうだから、大丈夫を発してしまう。




でも、きっと大丈夫だと思ってやらないと
やっていけない時だってある。





「だって」




「彼女に言わせるの? 自分でちゃんと言わないと後悔するよ?」 





「……はい」





恐る恐ると入ってくる星哉の表情が 
固くて緊張してるのが分かった。







「おー! 星哉!」





「一週間も何してたんだよー」





「入院ってどうした? 怪我でもしたのか?」  





飛び交う言葉に悪意はない。
けれど、聞けば聞くほど星哉は言いにくくなる。






「あー、怪我ではない」



星哉がやっとのことで答える。
怪我、ではない。






なら何か?





察しがいい人なら気付くだろう。






案の定、眉を潜めたバレー部の仲間が呟く。






「あらぬこと、言い出さないよな?」







その、あらぬことです。






心の中で私が呟いてしまう。
一週間前の私だってこんな未来、
予想していなかった。






「星哉、どうしたの?」





教室の目立ちやすいグループの女の子が
巻いた睫毛の下で目を細くした。
以前から、星哉に取り巻くことの多い子だ。
甘ったるい声が教室を毒々しくしていく。








「簡単に言えば、余命一年?」








星哉の声に教室は静まり返った。
誰もが、理解出来ずに考えている。







なんで疑問文なんだよ、と心の中で突っ込んでみた。







そんな風にしていないと、
また泣いてしまいそうだったから。