吹き出した。
「そりゃあ、俺だって一応人間だわ!」
ほんとに、ほんとに。
こうやって、緊張をほぐしてくれて。
「ああ、好き」
ひとりでに零れた言葉に彼女が反応する前に
強引にその体を引き寄せる。
「本当に、ありがとう」
伝わってよ。本気だよ。
余命を言われても、
向日葵を振り回してしまうと知ってても
離すのを躊躇うくらいに、好き。
躊躇って、結局ここにいてくれって
願っちゃったし。
どうしても諦められないし。
死を前にして、最初に思ったのは君なのに。
こんなに、素敵な彼女を見つけたのに。
「神様は、意地悪だ」
今しがた、言おうと思った言葉が
向日葵の声になった。
「向日葵」
「こんなに好きなのに、残酷だっ! これだけ好きなのに私の前から奪うなんて! 他に悪いことをしてのうのうと生きてる人がいるのに、私みたいな平凡に生きてる奴だっているのに、どうして星哉なの? どうしてなの?」
ただただ、びっくりした。
感情をこんなに露(あらわ)にした彼女は
見たことがなかった。
こんな、やるせない気持ちを
向日葵が感じてくれていた。
神様は、意地悪だ。
一緒にいる時間が長くなるにつれ、
好きも増えていく。
離したくなくなっていく。
胸の中で泣き叫ぶ向日葵が愛おしくてしょうがない。
この胸の中に、三十年後とか
そんな先でもいてほしい。
「まだ、ちょっとだけ」
言い訳をしてそこに留まる君の泣き顔を見て
あと何回泣かせるのかな、と思った。
学校はすぐそこでちらほらと人は通るのに。
そんなのも無視して、俺は向日葵を抱き締め続けた。