学校への迂回ルートをゆったりと進む。
右腕がまだ、痛い。






「向日葵」





「何?」





ここで、怖いって言えば少しは
この溝は溶けるのかな。






教室に入るの、怖い。 
この本音をさらっとこぼせばいい。







向日葵なら、分かってくれるだろう。
どうせ、これから何も出来なくなるんだ。
少しの弱音くらい、いいはずだ。







いくら心配ばっかりな向日葵も
それくらいは分かるはず。





「ねぇ、怖い」
 




俺の呟きに立ち止まって、向日葵は笑った。





「……良かった」


 
 
え?  




なんで……人が怖がってるのに?      






「星哉が、普通で良かった」



「は?」



 

言っていることの意味が分からなかった。







普通って、普通だろ。






当たり前じゃん。  





「超人的にバレーが出来て、勉強もちゃっかり出来て、女の子にも困らない」






最後のところだけ聞き捨てならないけど
少しそれは置いておく。





「何が言いたいの?」   






「星哉が緊張も怯えもある、ごく普通の男子の一人だって分かって良かったの」