「ありがとう」
この言葉に込めたたくさんの想い。
きっと分からない。
向日葵は気付かない。
何回も色んな言葉に込めたたくさんの思いを
君は気づいてないだろう。
大事なところで鈍感な彼女に、
伝えたいよ、このたくさんの重なった気持ち。
「行こう、学校」
左手に小さな手が入ってきた。
俺は、驚いて隣を見る。
一回り俺より小さい彼女はうつむいていた。
「向日葵……熱ある?」
「なっ、ないし! ただ、繋ぎたかっただけっ」
ちょっと、ツンデレな彼女が
やることにはいつも驚く。
自分から手を繋いだことなんてないくせに。
朝行こうなんて、初めてだし。
最近、向日葵は変だ。
そう思いながらも顔を真っ赤にして
目を反らしている彼女はかわいくて頬が緩む。
ああ、本当に、この幸せな時間が続けばいいのに。
「好きだ」
「何か言った?」
ふふ、と心の中で笑った。
知らなくていいよ、きっと本気なのに
まだ気付いてないんだ。
なら、最後の最期に教えてあげるだけだ。
俺の意思の強さを。
向日葵への思いの強さを。