ずっと、ほしくてたまらない。



萩本さんのことが、この腕の中にいないことが
思われる度、苦しい。





ここに来て。
ここに来て、俺の目の前でその顔で笑って。




そんな欲望をまた閉じ込めて、
友達らしく、微笑みかける。






「迎えに行ってやってね」





きっと鈍い彼女のことだ、
俺のことを星哉と仲がいいバレー仲間で
自分達のことを応援してくれてる
心強い友達だと思っているに違いない。






「うん!」





そんなに、そんなに嬉しそうだと。






俺まで嬉しいと錯覚しそうだ。
極度の恋愛感情は常に君のために動いてる。






ねぇ、好きなんだけど。
そう言えたら。










「武田君、いつもありがとうね」






綺麗に整った唇が俺の名前を呼ぶごとに、
地から足が離れる気がした。







「何が?」




    

とぼけてみせる。
だってそれ、自覚症状だから。
萩本さんの前でいい奴でいたい、
ただ、それだけだから。




本当の俺は優しくなんかない。
欲しいもののためなら親友のことなんて
目に入らない、そんな奴だ。






「星哉のこと。助けてくれて」





「全然、なにもしてないよ」





君の前では、優しくて思いやりのある
彼氏の親友でいると約束しよう。






君と星哉を応援する良き友達を演じよう。







星哉が死んだとき。
その時、彼女と星哉の間の歪みを
味方に、萩本さんを奪う。