「遅かったけど、大丈夫?」





「うん、心配して待っててくれたんだよね? ありがとう」





穏やかに笑う君を見れば、
どんな疲れでも吹き飛ぶ。





でも、バスから降りてきた君のしていた顔。
あんなどこかに飛んでいってしまいそうな程、
幸せそうな顔。







俺は、させてやることは出来ない。
星哉にしか、出来ないことだ。





うまくいったんだろう、とおもう。
君がそうやって笑ってること、喜ばしい。
その反面、がっかりもしていた。








「ちょっと、暗いから待ってた」






「ごめんね、結構遅かったでしょ?」






勢いでだろう、彼女の手が俺の手を包む。
心臓が五月蝿くて跳ね上がって
思わず顔を背ける。





ちょっと、こうやって抜けているから
色んな男子に狙われるんだけどな。
少し、期待してしまうし。



あ、と小さい声をあげてその手は離れていく。





「ごめんね、つい……。武田君女子に人気だもん、こんな所見られたら困るよね」





そんなことないんだけどな。
どれだけの女子がいたとしても、
君と天秤にかけることなんて出来ないのに。






見られたら困る?
いや、見られて噂されてそのまま俺のものに
なってほしいくらい。








星哉のこと、友達として大好きだ。









でも、この笑顔を毎日見れたら。







小さな願望が大きくなってきて。







そう、願ってしまう。
友情と恋愛とどちらかを選ぶかなんて
その時次第。







星哉がこれからいなくなって
泣く萩本さんを予想してしまうと、
喉元まで俺のところに来なよと言う言葉が
出てしまいそうになる。