案外そこは埃が多くて
咳き込みそうだった。
必死でそれを我慢しているのが分かったのか
星哉が頭を優しく撫でてくれていた。
それだけで、心臓に悪いというのに。
口の前で指をたてている星哉が、
綺麗だった。
舞っている埃さえも、
舞台演出の白い羽になる。
幻想的で綺麗で、儚かった。
そうしている合間に、
コツコツと、足音は上の階へと遠ざかっていった。
足音が完全に聞こえなくなったのと同時に、
安堵の溜め息が二人の口から漏れた。
顔を見合わせると、押さえられなくなった
笑いが込み上げてくる。
声を抑えて吹き出す。
「なんで私たち、隠れてるんだろう……」
なんでか可笑しくて、たまらなかった。
「ほんと、それ……」
星哉まで吹き出していた。
ああ、良かった。
ずっと暗かった君の顔が晴れていた。
それで、十分だ。
さっきの見回りの人にそっと感謝した。