「波多野っ!」
優翔は、優しすぎる。
優しすぎて優しすぎてそれでも
足りないくらいに優しすぎる。
優翔の死んだ理由に、武田優翔はいないんだという言葉。
分かる気がした。
彼は、自分が死ぬことを知ってたんだ。
人の記憶から消えてしまうことさえも。
私のために、こんなことまでして。
「優翔ってすげえよな」
「うん」
声にしつくせない感嘆。
「思い出せた?」
「うん」
幼稚園の頃、彼が呟いた言葉を。
「死ぬときに、俺に守りたい奴がいたとしてどうにもならない時には一番信頼ある人にそいつを頼む」
当時、そばで聞いていたのは私だけじゃない。
あの時一緒にいたのはー。
「波多野だったんだ」