「何一つ残ってないの、だからこれからもきっと見つからない。ダメもとでやるから、誰かを巻き込みたくないの」







そう、ダメもとで。







彼がいたという証明は、出来ない。









何も彼が残していかなかった。







ということは、残したくなかったのかもしれない。









探してほしくないかもしれない。








そうだとしても、私一人なら







記憶のせいだって言える。







「本当に何一つ?」







「うん」






「本当に?」






「そうだよ」







……なんで、こんなに念を押すんだろう。







「優翔が辛いな、それは」







「え?」








覚えてない……のに、なんで?








下の名前、私は教えてなかったのに。