「言ったってきっと、分からない」






「分からねぇよ、そんなこと」 







覚えてないのに、思い出せる訳、ないじゃん。












「この教室で存在がなくなった人がいる」









「……存在。つまり、俺とかクラスの奴は覚えてねぇのに長瀬は覚えてるってこと?」











「まぁ、そういうこと」









「間違ってたらその……ゆうと?って人に申し訳ないんだけどその人って萩本のこと好きじゃなかった?」 









なんで、なんで?









分かったの?







「その、通りだよ」








「やっぱり、でもそいつがいた形跡って驚くほどないのな」










「何にも残ってないの、何一つ」










「ふーん……」




 



興味なさそうな声で波多野は、視線をずらした。













何か、呟いてたけど聞こえなかった。










「……のに」









「え?」



  


「いや、なんでもない」