本当に、どうしよう。
私と向日葵と吉岡しか覚えてないなんて
誰にもこの胸の痛みは伝わらない。
この気持ちをかきけすことだけが、
不甲斐ない気持ちのやり場となる。
「幼馴染み……だから」
あなたさえいればいい……なんて
本当にアウトなのに。
私、もう少し冷静な奴だったのに。
呟いた反論の説得力はもうほぼない。
「だって、あんたがいるのが日常だったのに」
小さい頃よくした喧嘩。
そのあと、私はいつも一人で泣いてた。
でも必ずいつもその声はてを伸ばしてくれた。
困ったように、気まずそうにしながらもその手を
必ず私に差し出してくれた。
いつのまにかその手は私の頭を撫でるようになり、
背中をさする手は大きくなっていて
身長は抜かされ、涙をぬぐうようになった。
生意気なガキなくせに、必ずそうやる時は
決まっていつも困ったような顔をして。
そんな、記憶も。
全て全て無かったことになってしまう。
「どうしてかは聞かないけど、あなたはこの家を知っててしかも、きっとここに来たことがあるのね?」
昔から優翔のお母さんは察しが良かった。
それが、少し嬉しくて私は必死で首を縦に振った。