「ごめん、待たせて」




不意打ちで抱き締められて体がびくっとした。




「後ろからやるの……好きだね」




照れ隠しに言ってみれば、クスッと笑われる。
やっぱり、力は全然入っていない。
また現実を見せつけられたようで
頭が痛くなる。

  



「ごめんね、待たせちゃって」
 



「ううん」





武田くんの姿は見当たらなかった。
武田くんは帰ったのかな?





「優翔には、先に帰ってもらった」


私の思いを汲み取ったのか、
答えが帰ってくる。





「そうなんだ」





「話の、続きを頼んでもいい?」







「うん、あのね」




吸った息がとても冷たかった。
頬に当たる風が暗がりの中に吸い込まれていく。





「星哉が良ければ、隣に……いたい」



ぎゅっと瞑った目の先で
青い光が点滅する。



「いいの?」



おそるおそる目を開けると
パッと明るくなった顔が前にあった。



頷くと一層その顔は明るみを増した。



「うん」





「やばい、俺今すごいほっとしてて嬉しくて……なんだろ、本当に嬉しい」






「私も……嬉しい」






こうやって過去の為にだって何回でも
戻ってこれるなら
過去の為じゃなくてもいられないかな。






胸にうずいた長い間仕舞い込まれていた
思いを噛み締めた。






今なら、もしかしたら
言えるかもしれない、と。