あれから、もっと容態は悪化した。
声なんか出ないし、体ももうほとんど動かない。
食事だって、もう食べる気にもならない。
チューブで流れ込んでくる液体は、
味がしない。
全てが単調に見えて、全てが幸せのように見えた。
俺以外は、誰も彼もが幸せに、そんな風に見えた。
そんなこと考えてたら、
胸の奥深くがじゃりっという音で
固まったような気がした。
何が起きたのかを確認する余地もなく
それは突然に訪れた。
体全体が切り裂かれ、血が逆流する。
のたうち回ってナースコールに必死で手をかけて
スマホの三番を押した。
そこで意識が途切れた。
……これが、賭けだ。