「あの時、俺はもう体が動かなかった」
この先が、私が願うものだったなら
どれだけ、良いだろう。
「ねぇ、星哉。勝手だけど予想していいかな? 合ってたら説明しなくてすむでしょ?」
ゆっくりと微かに動いた顎。
それが了解の合図だと受け取って私は喋りだした。
「星哉はもうその時には体が動かなかったんだから、これは私のそうであって欲しいと言う願いだけど……」
あの時、何回も思ったそうであって欲しいという事実。
でもそんなことないと消され続けてきていた事実。
「美結が勝手にあんなことしてた?」
美結が私が傷つきそうな言葉をただ言っていただけで
星哉は動けなかったから抵抗できなかった。
「抵抗出来なかった」
はいもいいえもない答えだけど、
私は彼の固くて固くてどうにかなりそうな体を
柔らかく抱いた。
「お互い、つらかったね」
「ねぇ、お願い」
微かな声が私の耳元で呟く。
「もう、俺に関わらないで」