「あいつなら、すると思った」
「予想の範囲内だったのかあ」
「変なことされないようにね、するかも……あ、でもされてもいいのか」
「栄夏、今日なんか言ってることよく分からないよ」
「え、あ、そうかな?」
自分の返答の焦りようにも気づいてないみたい。
「武田くんは何もしてこないと思うよ」
そういう間柄じゃないし、
きっと、あれだけ人の事を考えられるから
私が今そういうのについていけない状態だって
分かるはず。
「混んできちゃったし出ようか」
「長話も十分にしたし、ね」
グラスが二つ乗ったトレーを、返却口に。
喫茶店を出れば冷たいに冷たいを重ねた寒さと
風が襲ってくる。
「じゃあ、優翔と約束してるんでしょ? 私は帰るね」
時計を見たらまだまだ待ち合わせには時間があるみたい
だけど、私は黙って手を振った。
「じゃあね」
私は、クリスマス仕様の通りの中で
少し浮いていた。
そんな気がした。