「閉祭まで残り十分となりました」
放送の声を背に、たくさんの団体が声をかけだす。
「あと三個残ってます、ご協力ください!」
「今なら五十円引きです!」
「あ、アイス買ってくるね」
栄夏が残り三個のアイスを、買いにいく。
その姿を見送れば、朝の出来事が思い出された。
そういえば、栄夏は昔の話をしたがらない。
武田くんも、言いにくそうだったし。
……誰にも言いたくない、これから友達になる人には
秘密でいたい。
そんなに壮絶な思いは、したことがないけれど。
朝の人と、きっと栄夏は仲良くしていたんだろう。
……仲良くじゃなく、グループの下の子だったのかもしれない。
彼女のいる学校を探し回って
文化祭にいきなり来る友達にろくな人はいないだろう。
とすると、中学校時代あまりいい思い出がないのかも。
……なら、触れないでおこう。
そういうことだって、必要な時はあるのだから。
走って戻ってくる栄夏の目のずっと奥に
哀の色が見えた気がした。